青山スタイル|連載コラム
リーデル社が手掛けるワイングラスは、ワインを楽しむための最高の器として世界中に普及しています。 今回の「青山スタイル」は、リーデル・ワイン・ブティックを訪ね、リーデルの魅力に迫ります。

ウォルフガング・アンギャル社長
ウォルフガング・アンギャル社長/1965年オーストリアのクフシュタイン生まれ。85年大阪で開催された「技能五輪国際大会」のレストランサービス部門で金メダルを受賞後、日本に移住。2000年リーデル・ジャパン代表に就任。
「ワインの味わいは
グラスによってさらに深まります」

ー 他社にないリーデル・ワイングラスの強みとは何ですか?

一番の強みはワインをとても理解していることです。リーデル社は50年以上も前に今のグラス作りのコンセプトを発明しました。リーデルのグラス作りにデザイナーは存在しません。すべてのグラスはワインメーカーと共同開発する「ワークショップ(テイスティング)」で作られます。テイスティングのプロセスを何度も積み重ねる中で、ブドウの品種に一番理想的な形のグラスを作り上げるのです。

ワインとワイングラスが別々のものでなく、一緒になって初めて価値が生まれるという考え方なのですね。

そうです。1950年代後半にリーデル家9代目当主クラウス・リーデルが、グラスによってワインのテイストが違うということを発見しました。それからワインとグラスの相関関係の研究が始まりました。その後、リーデルはブドウ品種ごとの個性に合わせたワイングラスを次々に開発し、現在は約160種に及びます。 ワインがどのように口に入っていくのか、ワインの香りがグラスの中でどのように立ち上るのかを知らなければ本物のワイングラスは作れません。私たちはワインメーカーではありませんが、「ワインをよく知っている」ことが一番の強みなのです。

ー なぜ、グラスでワインの味が変わるのでしょうか。

ブドウ品種に合わせたワイングラスは、ワインの「メッセージ」を人の感覚に移し替えるのです。リーデルのワイングラスは、精巧に調整されたボウル部分、すなわち、形状・サイズ・口径という3つの変数を特色とします。これらの要素が複雑にからみ、ワインの味を決定付けます。グラスの縁の高さでワインが口に入る角度が変わり、ワインが舌のどの部分に最初に接触するかが変わってきます。それも1ミリ単位という繊細なものです。それによって味までも違ってしまうのです。これは長い期間の経験値から見いだされたものですが、これを統計的なデータで割り出し、職人の精巧な技術で具現化しているのです。リーデルは、「デザインの発想は製販図の上で生まれるものではなく、世界中の偉大な舌を持つ人々の協力のもとに、試行錯誤を繰り返し形づくられていく」ことを信念としています。

ー 味覚という感覚的なものを、科学的に分析し、匠の技で創り出しているのですね。そのリーデルの哲学とは何ですか。

「ワイングラスはワインを楽しむためのツールである」ということです。それは文化というよりは「ファンクション(機能)」です。リーデルの企業理念は、「フォルム・フォー・ファンクション」、つまり、「形状は機能が作り出す」というものです。形の美しさや見た目だけでなく、ワインを一番おいしく味わうための機能を最も大事にしているのです。

街全体が気品に満ち、
落ち着いた雰囲気を持つ青山
リーデル・ワイングラス リーデル・ワイングラス
リーデルはテイスティングのプロセスを何度も積み重ね、ブドウの品種に一番理想的な形のグラスを作り上げる。

ー ところで、アンギャル社長はもともとホテルマンとして、その技能を競うコンテストのために来日され、その後日本に移住されました。本店を構える青山という街にはどのような印象を持たれていますか。

私は、日本に来て日本の歴史と伝統に培われた深い精神文化に魅かれました。そして、ものごとのプロセスを大事にする日本人の真摯さにとても共感しています。青山は1989年にリーデルが最初に上陸した場所です。経済の中心地である丸の内と、表参道・原宿など洗練された感性の街との中間地点にあり、若い人から年配の方まで幅広いお客さまが来店されます。ビジネスライクでもなくカジュアルライクでもない。街全体が気品に満ち、落ち着いた雰囲気があります。ワインをもっと楽しみたい、もうワンランク上の生活を楽しみたいというお客さまがたくさんいらっしゃる。まさに当店でワインをテイスティングしていただける素晴らしい環境にあると感じています。

ー 今後、リーデルをどういうブランドとして発信していきたいですか。

ワインを楽しむときには、必ずリーデルのグラスがある。そういうワインと密接に関係するブランドとして広く浸透させ、日本のワイン文化の向上に貢献したいですね。ワインの味わいをさらに深めてくれるものが、ワインを注ぐグラスにあるのです。