青山スタイル|連載コラム
今回紹介するお店は地下1 階にある「くろ麦」。こしのある本格二八そばが味わえるそば店です。昭和53年の青山ツインタワー開業時から営業しており、地元のお客さまに愛されているお店です。厳選したそば粉を使い、丹念に手打ちしたそばは、味、風味ともに風格さえ感じさせます。季節限定のそばやさらしなそば、ゆず切りそば、三色そばなど風味を生かした変わりそばも多数用意しており、旬の味覚も楽しめます。店長の武田信次さんとそば打ち職人の松谷雅生さんにお話を伺いました。

武田信次店長
▲「味だけではなくそばの香りを楽しんでほしい。特に若い人たちにも、その味わい深い風味を知ってほしいですね」と武田信次店長。
そばの一番の魅力は、
「のど越しと香り」

―くろ麦の源流を辿ると何系になりますか?

<武田>栃木県足利市の「一茶庵」が原点です。一茶庵は大正15 年創業の名店で、全国からそば打ち職人がその門をたたき多くの名人を育てました。そば屋の業界では、この現象を「足利詣で」と呼んだそうです。一茶庵は、伝統的な手打ちそばの世界に、新しく「一茶庵流の手打ちそば」という大きな潮流を確立しました。「一茶庵流手打ちそば」の世界は、「そば文化」のひとつの大きな成果だと思っています。当店はその味を継承しています。

―「くろ麦」という店名の由来は?

<武田>昔は、そばのことを「くろ麦」を言っていたのです。その由来をそのまま店名にしています。

―こちらのそばの特徴は何ですか。

<武田>当店では国産のそば粉にこだわっています。小麦粉とそば粉はニ八(2:8)の割合。このバランスはそば屋によって違いますが、長年の経験からみて、このバランスが一番おいしいと思います。当店のそばは、麺はちょっと細めですが、手打ち特有のコシがあり、硬い食感が特徴です。

―そば打ちの実演は毎日やられているのですか?

<武田>のし棒と巻き棒を使ったそば打ちは毎日6 回行います。そのうち、朝は9 時過ぎから2 回、午後3 時過ぎから2 回は、 店頭で実演を見られますよ。やはり、お客さまの興味を引くようで、ガラス越しに見ていかれるお客さまは多いですね。

―こくがあっておいしいつゆの秘密は?

<武田>鹿児島県の枕崎産かつお本ぶしを使用しています。枕崎では品質の良いかつおぶしを作るために、品質の改良、向上が進み、今や全国にその名を高めています。現在でもかつおぶし製造は盛んで、かつお職人が技を磨き合い、品質の向上に努めています。
江戸時代から「鰹節番付表」で常に上位に位置し、当時から薩摩のかつおぶしのクオリティの高さが証明されています。
そばとつゆは相性が大事ですから、つゆのだしにはその店のこだわりが表れます。枕崎産のかつおぶしは、うちのそばに一番合っていますね。醤油はヒゲタ醤油からそばつゆ専用の醤油を取り寄せています。そばつゆは、「かえし」とだしを合わせて作ります。かえしは醤油、砂糖、みりんから作りますが、醤油を加熱する「本がえし」と加熱しない「生がえし」があります。

手打ちそば くろ麦
▲そばは何百年も変わることなく愛され続けてきた日本伝統の庶民の食べ物。その伝統の技術は、そば打ち職人の手によって継承されていく。
手打ちそば くろ麦
▲のし棒1 本、巻き棒2 本は江戸前のやり方。そば粉に小麦粉と水を混ぜながら、こねて団子状態にし、のし棒で平らにしていき、巻き棒に巻いていく。

―人気メニューとおすすめメニューを教えてください。

<武田>今一番人気は「ぶっかけ」(1100 円)ですね。3つのお椀にそばが2つ、1つには天かす、ネギ、きざみのり、かつおぶし、(大根)おろし、ワサビ、山菜の薬味7 種類が入っています。また、さらしな粉をベースに抹茶、けしの実を打ち込んだそばと二八そばの盛り合わせがお楽しみいただける三色そば(1250 円)、せいろ天盛(1600 円)も人気商品です。
そのほか、はまぐりそば、たけのこそばなど期間限定メニューで旬のものを味わっていただいています。
でも、一番人気はやはり「せいろ」ですね。季節に関係なく関東ではせいろが好まれます。

―そばの魅力って何でしょう。

<武田>のど越しと香りですね。

―そば職人が一番うれしいこととは何ですか?

<武田>やはり、お客さまが喜んでくれたときですね。普段は厨房でそばを作っているのですが、忙しいときは店に出てお運びもしますし、膳を片付けたりします。そういうとき、お客さまに「おいしかったよ」と言っていただけると、やはりうれしいですね。