青山スタイル|連載コラム
着る人の体型にフィットするオーダースーツは、着る人の印象を戦略的により良く魅せるという点において、既製品とは比較できない特別の価値があります。今回は、創業58年という歴史を持つテーラーフクオカ青山店の大坂和典元店長に、オーダーメイドの魅力を伺いました。

青山店元店長の大坂和典さん
▲「表はかっちりしたスーツでも、裏地は遊んでもいいんですよ。オーダースーツにはそういう自由さがあります」と青山店元店長の大坂和典さん。
お客さまのニーズを顕在化する

―青山店の店長になられたとき、どんな店にしたいと思われましたか。

<大坂>青山という立地に合うおしゃれなテーラーを目指しました。同時に、若いお客さまでも入りやすく親しみやすい店の雰囲気づくりに力を入れました。ビートルズやローリングストーンズのレコードとジャケットをディスプレーしたのも、テーラーの「堅くて敷居が高いイメージ」を払拭したかったからなんです。

―レコードはミスマッチな印象はありますが、違和感はぜんぜんないですね。

<大坂>ポピュラー音楽のルーツであるビートルズやローリングストーンズのレコードで、「全ての世代の人たちに向けた店」というメッセージを表現したかったんです。誰でも若いときには、ロックに限らず音楽を聴いていたと思うんです。それが仕事とか社会とかの枠にはめ込まれて、いつのまにか忘れてしまう。でも、自由な気持ちは忘れてほしくない。 ビートルズやローリングストーンズのジャケットのディスプレーで、既製服にないオーダー服の自由さを表現したかったんです。表はかっちりしたスーツでも、見えない裏地で遊んでもいいんですよ。大人になってもそういう自由な遊び心は持ち続けていただきたいですね。

―テーラーフクオカとはどんな会社ですか。

<大坂>創業は1954 年で、もともとは自転車でお客さまの元へ伺って、採寸してお客さまのオーダースーツを仕立てるところからスタートした会社です。お客さまのオーダースーツを作り出す上での手助けとなり、お客さまの喜びの声を聞けることが私たちの誇りであり喜びでもあります。
私たちはそれを、「GENTONALITIE(ジェントナリティ)」という言葉で表現しています。「Gentry(紳士的な)」「Gently(親切な)」「Tonality(個性)」という3つのキーワードを合わせた造語ですが、「誠実かつ紳士的な姿勢で全てのお客さまに接し、真摯にお客さまの声に耳を傾け、お客さまに喜んでいただけることを誇りとして日々努力すること」を経営理念の一つとしています。

テーラーフクオカ
▲ディスプレーされたR・ストーンズのジャケットが、「全ての世代の人たちに向けた店」を発信する。
テーラーフクオカ
▲シャツは7400 円から作れるので、若い人もオーダーの入門アイテムとしてチャレンジしやすい。
テーラーフクオカ
▲綿密なサイズデータを基に、お客さまが最も着心地の良いサイズバランスを究めていく。

―テーラーフクオカが目指すミッションとは何ですか。

<大坂>オーダースーツを通して、お客さまの個性や価値観を演出するお手伝いをし、お客さま一人一人にとって理想的なスーツを提供すること。そして、素材・縫製・トレンド・着心地のバランスに秀でたクオリティの高い商品を提供することです。

―取り扱いアイテムは?

<大坂>オーダースーツが主力で構成比率は約8割を占めます。そのほか、ジャケット、パンツ、ベスト、コート、シャツ、礼服まで取り扱っています。また、オリジナルのシャツ、タイ、ベルト、ジャケット、コートなどもそろえています。
お客さまの体型が変わられたといった場合、サイズのお直しも承っています。パンツのウエストだと5㎝くらいまで直せます。
オーダーシャツの修理も受け付けています。気に入ったシャツのカフスや襟が擦れてしまう経験は誰でもあると思うのですが、当店でオーダーしていただいたものならお買い上げの際に共地をお付けしますから、お直しは1000円で承ります。シャツは約2年でカフスがダメになりますが、修理すればさらに2年は着ることができますからコストパフォーマンスがとても高いんです。

―オーダーから完成までどのようなプロセスを経るのですか。

<大坂>まず、お客さまが求めるイメージを引き出して、それに合う生地、形、デ ザインなどを提案しながら、お客さまと一緒に全体像を作り上げていきます。
もちろん、オーダースーツもトレンドを取り入れないと満足いただけませんから、トレンドの提案もいたします。ファッションにあまり詳しくないお客さまには、メンズファッション誌などからイメージに近いものを選んでいただいたり、店に置いてあるさまざまな種類の現物をご試着いただいたりして、お客さまの潜在ニーズと思い描いているイメージを引き出します。
その上で、ジャケットの身丈を長めに取るとか、パンツの股上を少し深くするとか、お客さまの要望を取り入れます。